日本遺産:ガイドと一緒に地域の物語を巡る旅

2021/03/24
2021/08/23
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日本各地には、素晴らしい価値を持った史跡や遺産があります。しかしそれらは、元来ばらばらに生み出されたものではなく、歴史・地理などといった軸で他の史跡と関連性を持っているのです。一つのテーマをもとに、地域に点在する有形・無形の文化財に物語性を持たせ、観光振興や文化継承を図ることを目的としたものが「日本遺産」です。有形無形の文化財が一つのストーリーで繋がる日本遺産は、歴史的な背景など観光地への理解が深まるほか、今まで知らなかった場所を見つけるきっかけにもなります。

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今回は、日本全国にある104の日本遺産の中から7つを厳選。実際にそれらの遺産を訪れてガイドした経験のある7名が、日本遺産の物語を構成する史跡や文化財(構成文化財)含めた周辺のツアーを紹介します。(旅程は1泊2日)

STORY #039 荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間 ~北前船寄港地・船主集落~

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北前船とは、江戸時代に北陸や東北地方西部の港から日本海を通り、関門海峡から瀬戸内海を通って、兵庫や大阪の港に行った大型の商船のことです。北前船は、寄港地で安いと思うものがあれば購入し、船の荷物で高い値段のものがあればそこで売るという「商売」をしながら動いていました。北前船は、食文化や民謡、織物の技術など、各地に伝わる様々な文化も運んでいました。明治時代の初期に最盛期を迎えた北前船も、明治20年代には少しずつ減り始め、明治30年代にはどんどん姿を消していくようになります。そして、日露戦争が始まり、北海道周辺の海が危険になったことが、北前船の歴史のピリオドとなりました。

今回は、北前船の構成文化財のひとつ、青森県西津軽郡にある「円覚寺(えんがくじ)」と周辺の観光ツアーを紹介します。ガイドするのは、青森県在住の栗橋和子(くりはしかずこ)さん。全国通訳案内士の資格を保持しており、海外からの旅行客へのツアーガイドを行っています。

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栗橋さんのツアーは、北前船の航路がある青森の西側にスポットを当てたプラン。青森県津軽地方の伝統音楽「津軽三味線」の生演奏を聞きながら電車に揺られた後は、円覚寺を訪れます。

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円覚寺は、古来から澗口観音として信仰を集めた祈願寺。嵐の中から生還した船乗りのチョンマゲが多数奉納されていることからも船乗りの信仰の厚さを感じることができます。円覚寺の近くのレストランでは、青森県の特産品「雪人参」を使ったローカルフードが楽しめます。夜は日本海が見渡せる不老不死温泉でのんびりと。

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翌日は、朱色の千本鳥居が美しい高山稲荷と津軽金山焼を体験します。青森の自然や食、歴史・文化体験などが絶妙のバランスで組み立てられたツアーをぜひ体験してみてはいかがでしょうか。

荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間 ~北前船寄港地・船主集落~
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story039/

栗橋和子さんへのガイド依頼はこちら
https://www.wowu.jp/mediators/Kurihashi?locale=ja

STORY #028 木曽路はすべて山の中 ~山を守り 山に生きる~

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中山道(木曽路)は、江戸時代の五街道のひとつで、京と江戸を結んだ道です。鎌倉・室町時代までには信濃と京都・伊勢などを結ぶ重要な通路として発展していましたが、江戸時代には、五街道の一つ中山道の街道整備とともに木曾11宿といわれる宿場が発達しました。宿場は訪れる人々を迎えることによる経済的利益の他に、木曽馬や木工品など地場産品の需要をもたらす生産・販売・運輸の拠点として賑わい、木曽谷の経済を牽引しました。

また妻籠宿は室町時代、木曽義仲の子孫義昌が木曽谷の南の備えとして整備した山城妻籠城の麓に形成されました。木曽谷の人々のくらしは、森林の保護、木曽路や宿場の保存、伝統工芸品の伝承を大切に思う心を培い、今も木曽谷に息づいています。

今回は、構成文化財のひとつ、長野県にある「中山道」「妻籠宿保存地区」と周辺の観光ツアーを紹介します。ガイドするのは、東京都在住の豊嶋操(とよしまみさお)さん。全国通訳案内士の資格を保持しており、海外からの旅行客へのツアーガイドを行っています。日本酒ソムリエの資格を持っており、また日本のお土産について書かれた本も出版されています。

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今回のツアーでは、中山道(木曽路)を実際に歩き、馬籠、妻籠(妻籠宿保存地区)、奈良井を歩きます。それぞれのエリアでの自然の景色や宿場の様子など、その土地の生活を感じることができます。宿場では、昔ながらの郷土料理や生活の一部を体験することができます。

木曽路はすべて山の中 ~山を守り 山に生きる~
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story028/

豊嶋操さんへのガイド依頼はこちら
https://www.wowu.jp/mediators/misao_toyoshima

STORY #034 出雲國たたら風土記 ~鉄づくり千年が生んだ物語~

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日本古来の鉄づくり「たたら製鉄」で繁栄した島根県出雲の地では、今日もなお世界で唯一たたら製鉄の炎が燃え続けています。たたらという言葉はもともと「ふいご」を意味する言葉とされ、踏みふいごで鉄を吹くことからその意味が拡がり、その製鉄法全般をさして「たたら」と呼ぶようになりました。たたら製鉄は、優れた鉄の生産だけでなく、原料砂鉄の採取跡地を広大な稲田に再生し、燃料の木炭山林を永続的に循環利用するという、人と自然とが共生する持続可能な産業として日本社会を支えてきました。また、鉄の流通は全国各地の文物をもたらし、都のような華やかな地域文化をも育みました。今もこの地は、神代の時代から先人たちが刻んできた鉄づくり千年の物語が終わることなく紡がれています。

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舞台となる島根県雲南市・奥出雲市を案内するのは、外山比呂美(とやまひろみ)さん。2001年から旅行業界に携わっており、訪れた国は40以上、また20ヶ国以上の訪日力客をガイドした経験を持っています。千年の昔から続くたたら製鉄の歴史は、この地域にさまざまな文化や遺産を残してきました。いまでもその歴史に触れることのできる場所が多く残っています。今回のツアーでは、たたら製鉄に纏わる神話に関連する観光スポットを訪れます。翌日は、資料館でジオラマや映像資料などでたたらの歴史や製鉄技術について学びます。その後、製鉄所(工場)を訪れます。

出雲國たたら風土記 ~鉄づくり千年が生んだ物語~
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story034/

外山比呂美さんへのガイド依頼はこちら
https://www.wowu.jp/mediators/HIROMIN

STORY #013 津和野今昔 ~百景図を歩く~

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幕末の津和野藩の風景等を記録した「津和野百景図」は、藩内の名所、自然、伝統芸能、風俗、人情などの絵画と解説が100枚描かれた文書です。明治以降、国鉄の開通や、国道、産業用道路の新設などの町の開発が行われましたが、町の名士たちは百景図に描かれた姿をできるだけ残そうと知恵を絞りました。現在百景図に描かれた風景や伝統行事などのうち約半数が幕末当時のまま残され、現在でも体感することができます。

今回は、津和野百景図の構成文化財のひとつ、「鷲原八幡宮(わしばなはちまんぐう)」、「永明寺(ようめいじ)」と周辺の観光ツアーを紹介します。ガイドするのは、伊藤俊治(いとうとしはる)さん。出身地の山口県や近隣の歴史や温泉、食事などの紹介を得意としています。

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島根県津和野町へは、隣県の新山口駅から特急”SL Yamaguchi”に乗って向かいます。今回のツアーでは、『津和野今昔 ~百景図を歩く~』について、映像やパネル展示などで学ぶことができる「津和野町日本遺産センター」からスタート。津和野百景図に纏わる歴史や文化、伝統行事などについて学びます。

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その後は、「津和野百景図」に描かれた場面が多くある鷲原八幡宮(わしばなはちまんぐう)、永明寺(ようめいじ)、津和野城跡を実際に巡ります。
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津和野百景図に描かれた当時の様子と現在の様子を対比させ、幕末と変わらぬ風景に出会えることはもちろんのこと、津和野百景図の絵を通して感じられる水や風の音、自然の醸し出す匂い、当時の生活文化を直接肌で感じられるのは津和野の最大の魅力です。

津和野今昔 ~百景図を歩く~
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story013/

伊藤俊治さんへのガイド依頼はこちら
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STORY #016 古代日本の「西の都」 ~東アジアとの交流拠点~

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ストーリーの舞台は福岡県。大宰府政庁を中心とした周辺の地域は、かつて東アジアからの文化、宗教、政治、人などが流入・集積するのみならず、古代日本にとって東アジアとの外交、軍事の拠点でもあり、軍事施設や都市機能を建設するのに地の利を活かした理想の場所でした。現在においても大宰府跡とその周辺景観は当時の面影を残し、宗教施設、迎賓施設、直線的な道や碁盤目の地割跡は、1300年前の古代国際都市「西の都」を現代において体感できる場所です。

今回案内するのは、溝辺葉子(みぞべようこ)さん。京都出身の溝辺さんは、福岡は10年以上住んでいます。ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、アジア諸国などからの旅行客をガイドした経験を持っています。

今回のツアーは、現代的な都市景観が見られる福岡市内と、かつての西の都の面影を残す太宰府市のコントラストを楽しめる内容となっています。都会的な雰囲気を持つ福岡市内の中でも、博多には多くの神社・仏閣が存在しており、京都・奈良に続いて神社・仏閣の数が多くあります。この地域は、古くは古墳・大和時代から大陸との窓口であり、奈良~平安初期まで実在していた迎賓館があったりと、いにしえの時代から歴史的にも価値のある建物等が多く存在しています。

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『古代日本の「西の都」 ~東アジアとの交流拠点~』を構成する文化財の「櫛田社」と「観世音寺」、学問の神様としても有名な「太宰府天満宮」を訪れます。

古代日本の「西の都」 ~東アジアとの交流拠点~
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story016/

溝辺葉子さんへのガイド依頼はこちら
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STORY #37 日本磁器のふるさと 肥前 ~百花繚乱のやきもの散歩~

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肥前とは、旧国名のひとつ。西海道に属し、現在の佐賀県と、壱岐 (いき) ・対馬 (つしま) を除く長崎県にあたる地域を指します。陶石、燃料(山)、水(川)など窯業を営む条件が揃う自然豊かな九州北西部の地「肥前」で、陶器生産の技を活かし誕生した日本磁器。肥前の各産地では、互いに切磋琢磨しながら、個性際立つ独自の華を開かせていきました。その製品は全国に流通し、日本の暮らしの中に磁器を浸透させるとともに、海外からも賞賛されました。今でも、その技術を受け継ぎ特色あるやきものが生み出される「肥前」。青空に向かってそびえる窯元の煙突やトンバイ塀は脈々と続く窯業の営みを物語ります。この地は、歴史と伝統が培った技と美、景観を五感で感じることのできる磁器のふるさとです。

今回は、日本磁器発祥の地「有田町」と江戸時代の隠れた陶器の町「大河内山」(構成文化財)を訪れます。ガイドするのは、大淵真奈美(おおふちまなみ)さん。英語でのツアーガイドを11年行っており、英国、アメリカ、オーストラリアなど30ヶ国以上の訪日旅行者をガイドした経験を持っています。

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1日目は磁器の原料である泉山採石場、そして陶磁器専門の美術館では、歴史や文化を学びます。

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窯元を訪れて磁器を作る様子や作品などを鑑賞した後は、有田町を散策。道なりにずらりと並んだ建物の中には店舗もあります。店内では、様々な作品を鑑賞したり購入することも可能です。また実際に陶磁器の体験もすることも可能です。

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伊万里(いまり)市の大川内山(おおかわちやま)へ。三方を山に囲まれ、山水画を思わせる独特の風景はまさに「秘窯の里」。山道を進むと古窯跡など歴史的文化遺産とともに様々な磁器のオブジェがあり、静かな街並みと自然に調和しています。大川内山にはレンガ造りの煙突や窯元が立ち並び、300年余りの歴史と伝統を感じることができるでしょう。

日本磁器のふるさと 肥前 ~百花繚乱のやきもの散歩~
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story037/

大淵真奈美さんへのガイド依頼はこちら
https://www.wowu.jp/mediators/K_iTG

STORY #053 米作り、二千年にわたる大地の記憶 ~菊池川流域「今昔『水稲』物語」~

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菊池川流域は、熊本県の4市町(玉名市・山鹿市・菊池市・和水町)を跨ぐ地域です。菊池川流域には、二千年にわたる米作りによる大地の記憶が残っています。平地には古代から受け継がれた条里、山間には高地での米作りを可能にした井手(用水路)と棚田、そして海辺には広大な耕作地を生み出した干拓。米作りを支えた先人たちによる土地利用の広がりが、今も姿を留め、その全てをコンパクトに見ることができます。

また菊池川は水田を潤すだけでなく、米の輸送にも欠かせないものでした。江戸時代、菊池川の舟着場と「豊前街道」が交差した山鹿湯町は、米問屋や麹屋、造り酒屋、米菓子屋など米を扱う商店が軒を連ね、活況を呈しました。今でも酒蔵や麹屋などが商いを続けており、これらの町並みは訪れる人を楽しませています。

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菊池川流域のツアーをプランニングしてくれたのは、市原美智子(いちはらみちこ)さん。「装飾古墳」の専門館、熊本県立装飾古墳館や、オリンピックのマラソンで「最も遅い記録を持つ」金栗四三(かなくりしそう)の生まれ後を訪ねたり、とユニークな内容のツアーです。また、地域の暮らしや文化を感じられる豊前街道、国指定重要文化財の八千代座や、山鹿灯籠民芸館なども巡ります。

米作り、二千年にわたる大地の記憶 ~菊池川流域「今昔『水稲』物語」~
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story053/

市原美智子さんへのガイド依頼はこちら
https://www.wowu.jp/mediators/K_iTG

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