その土地に行きたくなる日本酒を造りたい。新たな酒蔵「ラグーン・ブリュワリー」の挑戦

2022/06/29
2023/01/19
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地方には並々ならぬ情熱・こだわりを持って生まれる食材や伝統工芸などが数多く存在します。それらの品質が一級品であることはもちろん、その背景には生産者の想いや今に至るストーリーがあります。

「日本全国・地産伝承 いき物語」では、 テレビ局が地元で活躍する人を深掘りすることを通して地方の魅力を伝え、 地元でしか流通しない特産品や伝統工芸品などを紹介します。

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※左側が田中さん

今回の主役:ラグーン・ブリュワリー 代表 田中洋介さん

新潟県北部、福島潟のほとりに建つ「ラグーン・ブリュワリー」は、2021年の清酒免許の規制緩和をきっかけに、2021年11月に免許を受け、12月から醸造を開始した新しい酒蔵です。
醸造を始めて6ヶ月、海外輸出用の日本酒や、国内向けの濁り酒(どぶろく)などのお酒を製造し、新たな酒蔵スタイルを確立すべく日々奮闘しています。

このオンライン配信番組では、老舗酒蔵で社長を務めた後、自身の酒蔵「ラグーン・ブリュワリー」を立ち上げた田中洋介さんに、酒造りへの熱い想いを語っていただきました。

出演:田村 淳さん(ロンドンブーツ1号2号)・キクチウソツカナイ。さん

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キクチ:吉本興業で芸人をしております、わたくしキクチウソツカナイ。が司会進行を務めさせていただきます。

今回のいき物語は、『その土地に行きたくなる日本酒を造りたい。新たな酒蔵「ラグーン・ブリュワリー」の挑戦』です。なかなか素敵なタイトルがついていますけども。

田村:ラグーン・ブリュワリーっていう酒蔵さんとしては、洋風な名前でね。きっと若い杜氏がやってるんだろうなという感じはしますけど。

キクチ:淳さん、日本酒などは普段どうなんですか。

田村:私めちゃめちゃ飲んでますから、日本酒を。

キクチ:けっこうお酒を飲まれると聞いてますけど、日本酒けっこう飲むんですか。

田村:今は焼酎が多いんですよ、でも焼酎ブームが来る前は日本酒を結構飲んでまして。

キクチ:そうなんですね。

田村:私の家には、お猪口が100個くらいあるんで。今日はお猪口にしなかったんですよ。いい名前ですし、バカラのグラスで飲もうかなと思って。

キクチ:おしゃれですね。でもそれに合うお酒かと思います。

田村:(お酒の)瓶を見た時に「あ、なんかお猪口じゃないな」と思ったんですよね。

キクチ:嬉しいですね。そういった瓶のデザインについても今回聞けると思います。

では、生産者をご紹介したいと思います。ラグーン・ブリュワリー代表の田中洋介さんです。よろしくお願いします。

田中:よろしくお願いします。

キクチ:淳さんが言ってくれた通り、お若いですね。

田村:若いですね。こういう若い作り手がこれからの酒蔵というか、酒蔵だけに限らずいろんなところで活躍してくれるのが、未来の日本のためになると思いますんで期待しております。よろしくお願いします。

キクチ:いや嬉しいですね。田中さん、今これでグッとハードルが上げられたんで気をつけてくださいね(笑)。よろしくお願いします。

ではさっそく色々聞きたいと思うんですけれども。ラグーン・ブリュワリーは、どう言った酒蔵なんでしょうかね。

田中:まず場所なんですけれども、新潟県の新潟市北区という所にありまして。山形とか福島に近い方面なんですけど、新潟市の中心部からもそれほど離れていませんで。3、40分車で走ると広がる景色の中でお酒造りをしています。

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田中:これが福島潟の景色ですね。近くに展望台があって、そこから見た景色なんですけれども。

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田中:こんな感じで、湖というか...新潟では「潟(がた)」と呼んでいますけれども。こういったものが広がっていまして、このほとりに20年前からある小さな建物があって、そこを今回借りて酒蔵にして、半年前から酒造りをスタートしました。

春夏秋冬、特に春なんかは菜の花が一面にすごく咲いて、真黄色に染まるすごい景色が広がっていて。冬は一転して真っ白な景色になるんです。

こういった環境で、日本酒と、濁酒(どぶろく)など...最近は「クラフト酒」と言ったりもするんですけれども、そういったものを作っています。

ただ、日本酒は免許の関係で輸出専用となっています。国内向けには濁酒などのクラフト酒を販売しています。

キクチ:規制なんかもあるんですかね。

田中:そうですね。そもそも日本酒の免許が取りづらいというのがありまして。規制緩和で、輸出に限っては免許が取れるよということで、昨年(2021年)4月から始まりました。

キクチ:写真で見てもらったとおり、めちゃくちゃ環境がいいんですね。本当に素敵な場所ですね。

田村:「お酒を作るには、水がいい場所がいい」って皆さんおっしゃるじゃないですか。やっぱそうなんですか?

田中:そうですね。近くにはたくさん雪山がありまして、冬の間に降った雪が春になって溶けて、その水で稲も育ちますし、酒も仕込まれるということで、やっぱり水は重要ですよね。

キクチ:イメージ的には、歴史ある酒蔵が多い感じですけれど、ラグーン・ブリュワリーができたのは半年前なんですね。

田村:「先代が酒蔵やってて、自分の代になって変えたくなりました」ではないですよね?

田中:全く新しく作られたということで。去年(2021年)の4月から輸出用清酒製造免許というのが始まって、いま全国で6件(新しい酒蔵が)生まれていますね。

キクチ:まだこれからどんどん増えていくんですね。

田中:まだまだ増えていくと期待しています。

キクチ:さて時間も深まってきていますので。まずは淳さんにお酒を飲んでいただいてから、お話を聞きたいと思います。

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田中:ラグーン・ブリュワリーでは、全ての商品に「翔空(しょうくう)」、「空を翔ぶ」という名前をつけているんです。

今お手元にあるものが、緑のラベルのもので、最近発売したばかりなんですね。夏向けにいいようにとのことで、クエン酸ってありますよね。レモンとかに含まれている酸っぱい...クエン酸をたくさん生み出す麹を使って作ったお酒でして。

飲んでいただくとわかると思うんですけど、甘酸っぱさがあり、非常に夏はさっぱりして、僕はシーフードなんかと合わせて飲むといいなぁと思っています。

田村:シーフード!言ってくだされば、用意したのに(笑)!

キクチ:食べ物によって何に合うかということもあると思うんですね。あ、いいですね、バカラのグラス。

田中:翔空が初めてバカラのグラスに入りましたね。

田村:いただきます。はーすごいな。はー...香りがね、僕が今まで日本酒を色々飲んできましたけど、香りからして新しい。新しいアプローチっていうかな、それが感じられる香りですね。いただきます。

キクチ:ほー、これは嬉しいですね。バカラで味わっていただきましょう。

田村:はー...うまいです。これはうまい!夏ピッタリっていうのはわかりますね。

酸味は確かに感じられるんですけど、全く気にならない。酸味に負けない何か...すごい甘みみたいなのが、酸味を包み込んでいってくれるんで、きつい酸味じゃ全然ないんですよ。

自然な形で栽培した果実の酸味っていうんですかね。うまく言えないんですけど。

田中:本当に的確だなーと思うのが、これは日本酒ではないんですよ。国内では展開できないので。

普通日本酒って、蒸し米と麹を発酵させて作るんですけれども、これは全て麹だけ、白麹だけでお酒を作っていて。

麹ってどうしてもブドウ糖などの甘みが出てきやすいので、その甘みと酸味が混ぜ合わさることで、すごくほんわかした甘みがあるんだけど、キリッと飲めるという。

キクチ:まさに淳さんが言ったことが、的を得ているというか。

田中:すごいですね。

田村:これは確かにシーフードと一緒に飲みたくなるね。アクアパッツアみたいなのいきたくなるね。

キクチ:白ワイン的な扱い方ですかね。

田村:そうそうそう。白ワインと日本酒のいいとこどりみたいな感じかな。でも、ちゃんと「和(の風味)」ですけどね。

キクチ:最高のコメントをいただきましたね。

田村:これバカラのグラスで合う感じ。俺が想像してた空気感でしたね。

キクチ:大正解でしたね。

キクチ:「(翔空は)日本酒ではない」ということにびっくりしてる方も多いようですが、これは規制などがあって、日本酒と違う作りになっているということなんですよね。

田中:そうですね。あえて日本酒の定義からちょっと外して作るということですね。

田村:俺ね、こいういう飲み物好きだわ。イノベーションだもん。新しいものを生み出してるんだもん、これ。この味わいだと国内はもちろんですけれども、世界を見据えている飲み物になってるなって感じですね。

キクチ:最高のコメントですね。

田村:世界でも通用するようにってたぶん作られているんですよね。

田中:そうですね、やっぱり世界の方っていうのは、捉えやすい味わいとか香りがすごく好みなんだろうなぁというのを思っていまして。

甘みとか酸味とか香りとかっていうのは、なんだろう...日本酒の、特に新潟の淡麗辛口とか、少し表現しづらいところよりは、少し捉えやすい味の方がいいだろうなぁと思って作っていますね。

田村:これね、下手したら世界のワイナリーがちょっと嫉妬するような味わいになっていますね。白ワインっちゃ白ワインとして飲めるだろうし、日本酒っちゃ日本酒だし。すごいですね。

新潟に縁もゆかりもなかった田中さんが、「ラグーン・ブリュワリー」を立ち上げた理由とは

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キクチ:新潟には縁もゆかりもなかったということですけれども、きっかけはどういうことだったんですか?

田中:酒の業界に入ったのは、10年ちょっと前なんですよね。僕は30歳の頃は東京で働いてたんですけれども、その時は求人媒体を扱う仕事をしていました。

当時の同僚が、新潟の今代司酒造という酒蔵の親会社の人材採用の手伝いをしていまして。彼から、「新潟に酒蔵があって、経営的には厳しいけれども、次期経営者...若い経営者を探しているよ」という話を教えてもらって。

それは面白そうだということで、同僚と一緒に、今代司酒造の親会社を紹介してもらって、「次期経営者候補になってみないか」というお話をいただき、新潟と縁ができました。

キクチ:それまでは、新潟と繋がりが全くなかったということなんですね。

田中:全くなかったですね。

田村:そうだったんだ。でも「新しい経営者を探してるよ」と言われて、そんなにポンと行けるもんですかね?

田中:親会社の親分の懐の深さも凄いなと思うんですけれども。どこの馬の骨ともわからないような人間ですが、それでも信じてくれて入れてくれたというところですね。

田村:なるほどね。

キクチ:やっぱり実際にお会いしてでの関係が。

田中:実は、今代司酒造に入社する前に、一回海外の経験をしてきたらどうかと。日本酒はいずれ世界に羽ばたくものだろうからということで、2年間シンガポールに行かせてもらって。シンガポールを経由して新潟にきて今代司酒造に入社しました。

田村:シンガポールでは、どこかの会社に入ってたんですか?

田中:親会社のグループ会社で、アルビレックス新潟シンガポールというサッカーチームがありまして。Jリーグのアルビレックスのこどもチームがシンガポールにあるんですけれども。シンガポールですけどプロリーグがあって、そこの試合運営やったり、スポンサー営業やったり、マーケティングやったり...小さい会社だったのでいろんなことをやらせてもらってましたね。

全然違う業界と思われがちなんですが、ファンづくりという点では、サッカーも日本酒もそんなに変わらないという感じなんですよね。

キクチ:お酒のファンをつけるという意味ですね。チームのファンをつけるというのは、近いものがあるということですね。

田中:そうですね。あと、「サッカー」と「サッケー(sake)」ですからね(笑)

田村:全然違うでしょ(笑)カタカナにしたら近いけど。

キクチ:じゃあ、お酒を作っていたわけではないのにっていうのもまたすごいことですよねぇ。

田中:そうですねぇ。まぁお酒はずっと大好きで、いちファンとしては、ずーっと好きだったんで。それで同僚が仕事を紹介してくれたっていうのがありますけどね。

キクチ:今代司酒造に入ることになって、そこからラグーン・ブリュワリーになるまでの流れっていうのは、どんな感じですかね?

田中:それはなかなか短い時間では語り尽くせないですけれどもね。最初2年間は部長職として入社して、そのあと2年経ったあと社長にさせてもらったんですよ。

田村:早いな!

田中:早いんですよ(苦笑)。僕もびっくりしたんですけどね。そろそろ社長をやりなさいってことで、それで社長になってから、8年くらい経ちました。

合計で10年くらい経った頃、今代司酒造も厳しい経営状況から立ち直ったし、社員もすごく増えたし育ったし、安定した酒蔵になってきて、一つ役割が終わったなって思って。

キクチ:すごいですね。田中さんが軌道に乗せたというところがあるんでしょうか。

田中:いや、僕だけじゃなくて社員の力が本当にすごいんですけど。でも、安定軌道には乗ったっていうタイミングだったんで。社長はしてましたけど、雇われ社長で、オーナーというか親会社があるので、まあいずれは自分の酒蔵を持ってみたいなという夢もあったんです。

そういうタイミングで、2021年「輸出用限定だけど、日本酒の免許が取れるよ」っていう制度が始まったものですから、いいタイミングなのかなと思って。ラグーン・ブリュワリーを立ち上げることになりました。

キクチ:お酒の規制は我々あまり詳しくはわからないんですけれども。

田中:そうですよね。日本酒の免許が新規で取れないっていうことが、そもそもあまり知られていないんですけれど。はっきりわからないんですけど、1953年に酒税法が改正されてから、需給要件という、需要と供給のバランスを常に取らないといけないという難しいものがあって。日本酒は残念なことにこの半世紀、消費量が落ち続けているんですよ。1/3以下になっているんですけど。そういう状態では、新しく参入させることはできませんという規制があるんですよね。

キクチ:もともとは酒蔵・日本酒を持っている人を守るための規制だったのが逆に今厳しくなって、みたいなことなんですね。

田中:既存の酒蔵を保護する目的でもあるんですけれども、そのために新規が入ってこれないのでなかなか健全な競争が生まれなくて、イノベーションが起きづらいというちょっと難しい状況です。

田村:日本酒と言えなくても、結果、飲み手がどう判断するかという時代に突入してきていると僕は思っていて。

確かにこれは日本酒と言えば日本酒だし、白ワインといえば白ワインだし、新しい飲み物ですと言われればそうですから。こういうイノベーションが起きていくっていう場所で、若い作り手がいろんな表現方法をやっていった方が、最終的には日本酒っていう文化ももう一回盛り返すきっかけになるような気がしますけど、その辺りはどうですか?

田中:ほんとおっしゃる通りで、僕も令和の時代は、酒も多様性だと思っていて。最初は輸出用の清酒...日本酒の免許が取れるから輸出用の清酒を始めたんですけれども、今こうやって国内で「クラフトサケ」というユニークなお酒を作り始めて、これはこれですごく面白いなって思い始めていてですね。

日本酒の酒蔵ができないことをやっているので、これは伝統的な麹菌を使って尚且つ、お米を使った醸造酒というところでは、ファンを広げていくひとつおもしろい取り組みができるんだろうなぁと思っていて、これはこれですごくやってよかったなと思っています。

田村:こういう若い作り手がいろいろ挑戦するからこそ、地域に根付いた新しい酒蔵ができて、この酒蔵が税金を納めてくれて、という流れになると思うんですよ。

だけど田中さん、遠慮気味に言ってると思うんですけれども...日本酒の世界は日本酒の世界で、新たなことをやろうとしている人を「酒とは認めない」というような声もあるんじゃないかと思うんです。よくぞそれにくじけずにこれ(翔空)を作り出したなって思うんですよね。その辺りの産みの苦しみはどうですか?

田中:周りにいる方は応援してくれる方ばっかりなんだけど。というのも、10年間は一応日本酒の世界にいていろんな諸先輩方とも関係も築いて、そういう中で挑戦をしているので、すごく理解のある方に僕は囲まれていますけど。

でも全国レベルでは、協会・団体からいろいろ反対の声があったり、ネガティブな声があったりということは正直あるらしいですね。

そうはいっても、僕らは「絶対、業界にとっていいことになっていますよ」って証明するしかないんだろうなと思っています。

田村:そうなんですよ。嫉妬だと思うんですよ。新しいことに挑戦して、しかも結果を出しているってことへの。自分達ができなかったこととか、自分達が知らないことへの恐怖感とかで、否定するしかないのかなって思うんですよね。

僕、最近奄美大島に行ったんですよ。奄美大島で、大島紬っていう織物があって。若い人たちがこの技術を使って、新しい大島紬をやろうと思ったら、大島紬の人たちが、「いや、お前のやってることは、大島紬としては認めないよ」って言われるらしいんです。

けどその人は、独自の感性で大島紬をやってたら、フェラーリから「フェラーリのシートに大島紬どうだ」って言われて、その人の大島紬が使われるんですよ。

でも、今まで大島紬って認めてなかった大島紬の団体が、「そうそう、大島紬ってすごいんですよね」って乗っかり始めるっていう。

ここが今まさにいろんな地域で試行錯誤しながら、自分達が守ってきた伝統と、新しいものへ向かっていくもの、まさに挑戦していくことへの融合点で、この融合点が、今この酒(翔空)の味に全部込められています。

キクチ:なるほどいい話!こんなに素晴らしい番組だったんですね!

国外に向けては日本酒を作り、国内に向けては規制があるので新しい濁酒などを作っているということですね。

田中:淳さんが仰ったことにも繋がるんですけど。海外への輸入者、バイヤーにはもちろん清酒をプレゼンして売り込むんですけど、意外と濁酒に興味を持つインポーターも多くて。

やっぱりなんか、海外の人ってあんまり「日本酒ってこんなものだよ」って決めつけてなくて楽しんでいるんだなって。すごく勇気づけられますよね。

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田村:ちょっと僕、「濁酒」の定義がわかっていないんですが、もう一度教えてもらってもいいですか?

田中:よく「日本酒の先祖」とも言われたりするんですけど。古来弥生時代から飲まれていたお酒とも言われています。日本酒との違いは、絞るか絞らないか、濾すか漉さないかの違いですね。濁酒を絞って透明にすれば日本酒ってことになりますね。

田村:絞るっていうのは、濾すってことですか?

田中:はい、一緒ですね。

キクチ:それぐらいの違いなんですね。

田村:(試飲して)うわーこれはうまいな。さっきの緑ラベルの方は、今までの経験値に基づいて味の説明ができたんですけど、濁酒に関しては、初めてすぎて甘酒っぽいのかなと思ったけど、甘酒とも次元が違う...うーん...うまい!(笑)

田中:濁酒って、どろどろしてアルコールが強くて、味も強いっていうのが多いんですけれども。新潟らしく淡麗なとこは残したいなというので、さらさらして後味もそんなに強く残らないようにしてるかな。ただ果実感はしっかり残して、あとちょっとガス感、プチプチ感がありますよね。

田村:発泡感もありますよね。いろんなご飯食べたいな。何が合いますか?

田中:生ハムです。

キクチ:洋風なものと合わせるのがいいんですね。

田中:生ハムでメロンを巻くみたいな感じなんですよ。すごくどっちも生きるんです。肉の油との塩味が濁酒に合うなぁと思っています。

キクチ:教えてもらわないと、濁酒と生ハムは合わせないですね。

田村:そうなのよ。でも生産者の人ってきっと、もうできあがった時に、酒って何かと合わせるし、どういう場所で飲んでもらうか想像しながら作ると思うんですね。

「このお酒には、どんな食べ物が合いますか?」って聞くとすぐに「生ハム」って出るじゃない? 僕たちは、一回生ハムと合わせてこのお酒を飲むべきなんですよ。で、そっから自分でアレンジしていけばいいんです。ベースを知って。

濁酒を飲んだことがある人、逆にどんな食べ物が合うか教えてもらいたいな。どう表現するのかな。

キクチ:(コメント欄を読んで)飲んだことある方、あ、スパイス系の料理とも抜群に合います、って。

田中:カレーとかですね。カレーってラッシーと合わせるじゃないですか。

田村:こんな繊細なのにキリッとしてるから、濃い味には合わないのかと思いますが、味が負けないですね。

田中:そうですね。今飲んでいただいている濁酒は、麹の歩合が高いので、甘みはしっかりとあるのが負けない理由ですかね。

お酒はその土地を伝える媒体である 〜酒造りに込めるこだわり〜

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キクチ:その土地を伝える媒体というのは、先ほどの話に伝わるんですか?

田中:地酒はその土地の素材を十分に生かして作るものだと思うので、お酒(地酒)を知るというのは、その土地の風土を知るということにも繋がると思っています。僕なんかも、日本酒を飲むけどワインも飲んだりしますが、飲みながらお酒ができた風土を思いながら飲みますんで、そうするとちょっとテーブルの上で旅をしてるような気分になるというか。そういうお酒がいいなと思いますね。

キクチ:淳さんも、いろんな種類のお酒は飲まれますか?

田村:飲みますね。

キクチ:この日本酒ブームは、もう一回きそうですかね?

田村:日本酒じゃないからこそ、なんか飲みたくなるっていう風に感じましたね。人に勧めたいですよ。「新しい作り手が、こういうアプローチで、こういうお酒を作ってますよ」って人に勧めたいし。お祝い事にもすごくいいなと思いましたね。プレゼントするのに。

キクチ:日本酒の...お酒の世界の多様性について、どういった考えがあるか聞きたいんですけど。

田中:繰り返すようかもしれませんが、そもそも日本酒は海外にしか送れなくて、国内では違うものを作るんで自ずと多様性が生まれてくるんですよね。

僕らが作れるお酒っていうのは、日本酒の製造技術に何か原料を加えたりとか、または原料を引いてあげて、日本酒とは定義を外して作る創意工夫が必要なので。本当に何でもできるっちゃなんでもできるんで、自ずと多様性が生まれますね。

キクチ:規制があるとはいえ、さらに何かを付け加えることが許されないわけじゃないですもんね。

田中:そうなんです、そうなんです。だから、うちはまだやってませんけど、日本酒のもろみの中に、ホップを入れて、ビール風味の日本酒でも、ビールでもないし...みたいなお酒を作っているマイクロ酒蔵もありますし、葡萄を入れているところもありますし。なんでもありなんだけど、フリースタイルで新しい味を楽しむのも楽しいですよね。

田村。へー。お米から作るんですもんね。じゃあそれこそ、酒米と合うようなものであれば、そこで融合してお酒にしていくというアプローチが今後起こりうるってことですね。

田中:そうですね。スパイスを入れて、カレーを楽しむようなお酒ができたりとかですね。

あと僕が試験しているのは、トマトの搾汁液を入れて...トマトと米って、イタリア料理でリゾットとかありますよね。ああいう感じの融合ができないかなと思って試しているんですよね。

トマトが地元の名産だからっていうのもあるんですけど、それをぜひ活用して美味しいお酒を作りたいなって思っています。

全国で僕みたいに、酒蔵はいくつかありますけど、みんな頑張ってていろいろ考えてて素晴らしいです。

田村:横のネットワークはあるんですか?

田中:はい、実はありまして。今月末(2022年6月末)に横のつながりの団体ができる予定で、まず6社でスタートします。

田村:へえー、すごいね。

キクチ:このお酒のパッケージも、地元にまつわるものだったりするんですよね。

田中:そうですね。これは福島潟を上空から眺めた感じなんですよね。デフォルメはしていますが、鳥の目線というか。

特に渡り鳥がたくさん来る所で、季節によって鳥の鳴き声がどんどん変わっていきますね。

田村:キクチはお酒飲めないんだっけ?

キクチ:はい、お酒は全く飲めないんですけど、お酒だけじゃないいいところがたくさんあって本当に良かったと思います(笑)。

普段カフェとかもあって...トマトのソフトクリームとかあるんですよね。お酒を飲めない方、お子様と一緒でも絶対楽しめる場所なんで、今回来れて良かったなと思います。

田中さんが描く将来の展望とは?

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キクチ:今後の明確な未来像など考えていらっしゃいますか?

田中:そうですね。小さい規模で酒を作るスタイルを、まず確立させたいなと思っています。

いま、酒造りを始めたいって人が意外といて。僕は半年しか経ってないのに、何人も見に来て「実は僕も酒造りをやりたいんです、僕も勉強したいんです」と結構来てくれているんです。

もしかしたら全国にたくさんいるんだなと思っていて、そんな人たちがスタートしやすいようなスタイルをまず確立したいなと思っています。

そうすると、全国にたくさん面白いことを考える意欲的な人たちが小さい酒蔵を作って、またお酒に多様性をもたらして、そして業界が盛り上がる。そういうことになればいいなと思っています。

キクチ:たしかに、酒蔵を簡単に自分で作れるとは思っていないですもんね。

田中:そう。でも頑張ればできるという状態をお見せしたいなと思っています。

●酒蔵体験

キクチ:ここは普段カフェスペースになっていて、この後ろが酒蔵になっていて見えるんですよ。僕、酒蔵ってこんな狭いイメージなかったんですよね。中ってちょっと紹介できる部分ありますか?

田中:はい、ちょっとだけ覗いてみましょうか。

(酒蔵スペースへ移動)

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キクチ:イメージといえば大きな酒蔵なんですけれども、こんな小さな場所なんですよ。

田中:借りてる場所なんですけど、もともと天井も高くて酒蔵に向いてるなぁと思って、ここを場所を選んだんです。

田中:ここが、タンクが並んでいる発酵室ですけれども。ちょっと覗いてみますか。

キクチ:お酒というより、フルーティーですね。

田中:ちょっとバナナっぽい感じです。この状態をそのまま飲めば濁酒、絞れば日本酒なんですけれどもね。

田村:今その工程はなんなんですか?

田中:発酵ですね。もろみという状態で、大体3週間...これは、あと1週間くらいですね。そうすると、アルコール度数が17-18%まで上がってきますので。お米から糖を引き出して、酵母がそれを食べて育って、っていうのを行っている工程ですね。

(移動して)

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田中:製造所は20坪くらいしかないので、本当にコンパクトにやっています。元々飲食店だった場所で、ここは厨房だったんですけれども、改造してやっています。

改造っていうほどやってないですけど、これがだったり、瓶詰め器でして、出来たお酒を瓶に刺してあげることで、一定量入って、充填される。

キクチ:ほんと手作業で、個人でという感じですね。

田中:これがお米を蒸す機械ですね。甑(こしき)って言いますけど。明日の朝イチでお米を蒸すんですけど。

田村:オレンジのタライは?

田中:はんぎりと呼んでるんですけど、洗い物によく使います。酒造りのほとんどって、清掃か洗濯なんです。ほんとに地道な作業ばかりなんですけど。

田村:このタライ、Amazonで売ってます?

田中:Amazonではこの大きさのタライは売ってないですね。

(移動して)

田中:これはお酒を絞る機械です。

田村:さっきの濁酒を入れると透明になって日本酒になるんですね。

田中:そうですね。そのまま入れるわけではないんですけれども。袋に入れてたくさん袋を入れていって上から圧力をかけて絞っていくんです。

これは、すごく小さいんです。普通の酒蔵さんは大きな機械を持っているんですけれども。

田村:このスペースで作れるんだなー。

田中:ぜひ、淳さんも作ってみてください。そうですね、それくらいの広さはあるんですけど。笑

田中:奥まであるんですがね、一瞬なんです。

田村:昔からの酒蔵だとやらない手法なんだよね。でもやっちゃうんだよね。

田中:酒蔵さんは、歴史があるので、長い歴史の中でお酒がものすごく売れてた時期もあるので、皆さんものすごく大きくなってるんですよね。

(席に戻る)

キクチ:すごいですね。この一角で作っているというね。
ちょっとお堅いイメージで、人が入ったら怒られるイメージだったんですけども。

田中:自由な雰囲気でやっております。

●酒蔵シェアオーナーのご紹介

田中:1年間のコースの場合は、生まれたての酒蔵の成長を見守っていただくというか。本当、毎回毎回、腕を上げていかなきゃいけなくて、改善を繰り返していきますので、ぜひ1年間見守っていただけたらなとも思います。

田村:そうね。だってこれ、俺は初年度から知ってるんだぜ。10年経った時、今こういう味になってるけど、初年度の味はこうで、2年目はこうで...って、酒蔵を初年度から応援できるタイミングって、自分が生きている中でなかなか訪れないと思うんです

キクチ:そうですね。貴重な機会なので、ぜひ参加していただきたいと思います。お酒の種類や、今あるお酒もどんどん進化していくってことですよね。

田中:一年後には飛び上がるようなお酒ができるといいなと、自分でも期待しています。

田村:今でも堂々たる酒ですよ。作り手の意志がちゃんと明確にあって、届いた先で笑顔になるお酒になっていると思います。

田中:ありがとうございます。

出演者からのメッセージ

ラグーン・ブリュワリー 代表 田中洋介さん
酒蔵が生まれたばかりという姿は、なかなか見られないと思うので、ぜひ僕らの成長を一から応援していただきたいなと思っております。どうぞよろしくお願いします。

ロンドンブーツ1号2号 田村淳さん
「お酒のその先へ」みたいなことがこの配信で僕は感じられて、まだまだ新しいお酒って生まれるんじゃないかとワクワクに包まれましたね。

田中さんがどんなお酒を作るのかっていう興味もありますし、田中さんのお酒を飲んだ人が、「えっ!俺だったらこう作りたい」っていう、なんか...クリエーターがクリエーターを生み出すことができるお酒だと思いました。この先の明るい未来のお酒のすごくいい転換期に僕は今いさせてもらえたなと思って嬉しいです。

あと、まだお酒は全部飲み干してないので、明日生ハムを買ってきて飲もうと思います(笑)。素敵なお話と、これまでいろいろ試行錯誤して作られたお酒を東京で味わえて嬉しいです。ありがとうございました。

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Pocket Owners「1年間応援プラン」では、年間のラグーン・ブリュワリーの活動を定期的に配信します。さらに、代表の田中さん自らがセレクトした「翔空(どぶろく等のクラフトサケ)」のセットを季節ごとにお届けします。

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Pocket Owners「夏のオーナープラン」では、7月〜9月の間、ラグーン・ブリュワリーの活動を定期的に配信します。さらに、代表の田中さん自らがセレクトした「翔空(どぶろく等のクラフトサケ)」3本セットを7月にお届けします。

酒蔵シェアオーナーを気軽に試してみたい方におすすめのプランです。

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